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PRESENT【執筆者/藍奈】 今日は宍戸さんの誕生日。 この日のために特別に用意したこのプレゼント。 喜んでくれるかな~ 「宍戸すゎ~~~んvvvv」 朝、学校に着くと宍戸さんの後ろ姿にダイブ。 これが最近の俺の日課。 「うわっ!長太郎・・・お前さ、朝っぱらから鬱陶しいぞ?」 「∑そんなっ!!ヒドイです。宍戸さん、俺の愛を・・」 「・・(愛なのか?これ)・・」 あぁ~クールな宍戸さん。 今日も惚れ直しましたv 「宍戸さん、今日は何の日か知ってますか?」 「今日?・・・何かあったか?」 「え?もしかして分からないんですか?」 「・・・だから何だよ」 「今日は宍戸さんの・・・」 「お~い、宍戸~」 俺の言葉を遮って話しかけてきたのは、向日先輩。 「?あぁ、岳人」 「な、宍戸。今日はお前の誕じょ・・・」 「わ―――――!!!向日先輩。ちょっといいですか?」 「な、おい!ちょっ、待てよ。何だよ?!」 先輩の腕を掴むと、その場から離れた。 「何なんだよ、離せよ!」 「あ、すみません」 「で?何で引っ張ってきたんだよ」 「あの、宍戸先輩。今日が誕生日だってこと忘れてるんですよ」 「はぁ?自分の誕生日なのに?」 「そうなんです。だから、放課後(部活後)に皆で驚かせたいんです」 「なるほど。他の奴はまだ知らないんだろ?」 「はい」 「じゃぁ、俺は3年に言っとくから他は任せたぜ?」 「はい!ありがとうございますっ」 俺は深々と頭を下げると、宍戸さんのとこに戻った。 「何コソコソしてんだよ」 「え?別に何でもないです。さ、朝練行きましょう」 「・・・ま、いいけどな」 その後の朝錬で、俺と向日先輩が走り回ったのは言うまでもない―・・・ 放課後。部室にて。 「はぁ~」 何か、疲れたな。 「何や?溜め息なんかついて。幸せ逃げてくで?」 「あ。忍足先輩」 「岳人に聞いたで?宍戸を驚かすんやて?」 「はい!だって宍戸さんったら、自分の誕生日忘れてるんですよ?」 「宍戸らしいやん」 「まぁ、そうなんですけどね」 「けど、企画者が疲れ気味で大丈夫なんか?」 「ははっ、まぁ。大丈夫ですよ」 「ホンマか?まぁ、無理はせんこっちゃな」 「はい。ありがとうございます」 ガチャ― 「鳳~宍戸、もうすぐ来るぜ?」 「わかりました。それじゃ、皆さんヨロシクお願いします」 宍戸さん、喜んでくれるといいなぁ~ 「~~だよ」 「~~~から入れ」 ドアの外から声が聞こえてくる。 あの声は、宍戸さんと部長の声。 ガチャ― 「入れって言ってんだよ!!」 どんっ― 「って-何すんだよ!」 パンっパパン 「宍戸さん、お誕生日おめでとうございま~す!!」 「わっ!」 クラッカーの音にビックリして腰をぬかす。 「宍戸さん?大丈夫ですか?」 「・・・」 「宍戸さん?」 「今日って、俺の誕生日だったのか?」 「うわっ!宍戸、自分の誕生日マジで忘れてたんだ!」 「いいだろ、別に」 「フン、お前らしいな」 「何だよ。悪いかよ」 「悪かねーよ」 宍戸さんと部長の間にピリピリした空気が流れる。 「あ、あの。宍戸さん」 「長太郎、お前だな?これ考えたの」 「はい!!あの・・・ダメでしたか?」 気づいてくれたのは嬉しいんだけど、失敗だったかな~? 「・・・はぁ」 溜め息をつくと、俺のところにきて頭を掻き回す。 「な、何ですか??」 「ありがとよ」 「!し、宍戸さぁ~~~~んvvv」 ガバッと抱きつくとその勢いで床に2人して倒れこんだ。 「~~長太郎!!どけ、重い」 「あ、すみません・・」 急いで起き上がると、宍戸さんを起こす。 「そうだ。宍戸さん!俺、プレゼントがあるんですよ」 「プレゼント?」 「はい。使ってくれますか?」 「・・・物によるけどな」 「ダメです。使ってください!!絶対にいいものなんで」 「・・・(怪しい)・・・」 怪訝そうな目で見られるけど、そんなの気にしてられない。 「使ってくれますか?」 最高の笑顔を向けながら聞く。 「・・・わかった。使ってやる。で?何なんだよ、そのプレゼントって」 「これです」 綺麗にラッピングされた袋を渡すと、宍戸さんはそれを開け始める。 中から出てきたものは・・・ 「//////何だよこれは!!!」 「ほ~ええもん貰たな、宍戸。俺も岳人にプレゼントしよかな」 「っ///ヤダ!そんな事したら絶交だぞ!!侑士」 「そらないわ~」 俺がプレゼントしたものを見て、忍足先輩と向日先輩が横で騒ぎだす。 宍戸さんは顔を赤くして俺のあげたモノをフルフルと握りしめている。 「宍戸さん?約束ですからね?」 「っ・・誰が使うか!こんなもの!!」 「∑ヒドイ!!一生懸命探したんですよ~?絶対使ってもらいます」 「嫌だって言ってんだろ!!」 「さ、早く着替えて帰りましょう。明日は休みだし、今日は頑張りますよvv」 「長太郎、人の話は聞け!!」 俺が宍戸さんにあげたモノ・・・ それは、宍戸さんのサイズにぴったりな『メイド服』 こんなプレゼント僕くらいですよ? 今日は楽しい夜を過ごしましょうねvv 宍戸がその日、メイド服を着たのかどうかは、長太郎のみぞ知る―・・・ ▼藍奈 コメント 宍戸誕生日秘話(!?)
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96 :名無し募集中。。。:2010/03/16(火) 02 00 21.86 0 95 第381回 「妬かないの?」 「え?なんで?」 「他の人に好きって言われたんだよ?妬いてくれないの?」 「・・・いや、みやは別に好きじゃないし」 「またそうはっきり言うんだから。ちょいちょい傷ついてんだけどなぁ。」 ももはあからさまに落ち込んで見せた。わかってる、演技してるって。 だって顔笑ってるもん。でも、だけど、一瞬、本当に悲しいって顔をしたから だから・・・・素直になってみた。あの、会長さんみたくはいかないけど。 「・・・正直言うとちょっと妬いた」 「え?なんて?もっかい!」 「もう言わない」 「えぇ、みや言ってよー」 「言いません!」 「みやぁ!」 なんて、結局はいつもの言い合いになって笑って終わり。そう思ってた。 だけど、一瞬でもしてしまった嫉妬がうちのことを変えた。 いや嫉妬してる時点でもう変わってたのかもしれないけど。 好きだと言われててもあんまりピンとこなかったし、 ももとのやりとりも好きと言われてからも普段と変わらなくて意識なんかしてなかった。 思えばそれは決断することから逃げていたのかもしれない。 だけど、今日の話を聞いて会長さんに嫉妬した。 それはももを好きだって言ったこともあるけど、素直に決断したことへの 羨ましさもあったと思う。すごいなって、感覚。 でもそれがなんとなく悔しくもあった。・・・うちは素直じゃないから。 97 :名無し募集中。。。:2010/03/16(火) 02 02 23.42 0 96 第382回 ・・・会長さんにももは渡したくないな。 妬いて、羨ましくて、悔しくて、 ・・・だからやっぱり、ももは渡したくない。 「もも、・・・・うち、ももが好きかもしれない」 ももの家からの帰り道、星空にそっと呟いた。 誰の耳にも届くことのない言葉が小さく響いてすぐに消えた。 ・・・でも、まだ「かもしれない」だから。 まだ、違うかもしれないから。 だから、この気持ちはまだ、心の中に置いておこう。 122 :名無し募集中。。。:2010/03/18(木) 01 07 30.34 0 97 第383回 「ありえない」 「ていうか眠い」 「まだ7時過ぎなんですけど」 「昨日遅くまで勉強してたから眠い・・・」 「何を考えてるんですか、いったい」 「さぁ、全くわからない」 「・・・ちょっと寝てもいいですか?」 「てか普通に狭い」 「ちょっとみやそっちいってよ」 「やだよ、千奈美が行けばいいじゃん」 「まあまあ、ケンカしないの」 「そういやえりかちゃんなんでいんの」 「いや呼ばれたから」 「入んの?」 「たぶん」 「あ、ご、ごめんなさい」 「いいよ、狭いんだから当たらない方がおかしいよ」 ここにいる全員がもれなく、一言は文句を言った。 それはすべて、部長に向けられている。 そしてその部長は、人を朝の7時過ぎに呼び出しておいて なぜかいない。 「もも何やってんの、あぁ、超腹立ってきた」 「まぁまぁ、みや」 「だめ、来たら絶対怒ってやる」 123 :名無し募集中。。。:2010/03/18(木) 01 08 13.72 0 122 第384回 ・・・しかし、狭いなぁ。 何が悲しくてこんな狭い部室に16人も・・・。 イスは3つしかないから、地べたに座る人もいるし机に座る人もいる。 ・・・満員電車くらい、狭い。ぎゅうぎゅう。 ももが来たところで、ゆっくり立ったり座ったりする場所は一切ない。 何を考えてんだか。 あ、実際活動を始めたらどうなるんだろう?ここではもちろんできないし この間みたいに会議室・・・もいつでも借りられるわけじゃないし。 かといって部室変わるのは当初の目的からして相当矛盾してしまうし。 たいたいももがそんなの絶対いやって言うし。 じゃあ、どうするんだろう? そういえば、会長さんいないな。・・・ひょっとして、みんなにお披露目、的な? 「みんなごめーん!部長、ただいま参上!なんつって」 しょうもないことを言いながら、部長、ことももは現れた。 ドアを開けた瞬間ぎょっとした顔をしたことをうちは忘れない。 だから、ももは部屋には入らずドアを開けた状態で話をすることに決めたらしい。 「もも遅い、一番遅いってどういうこと」 部屋の真ん中辺りにいるうちは、入り口のももへ声をかけた。 「ごめんごめん、まぁ、そう怒らないの」 軽い。非常に軽い!みんなどんだけ狭くて暑い思いしてると思ってんのあのバカ。 124 :名無し募集中。。。:2010/03/18(木) 01 08 54.15 0 123 第385回 「ごめん、みんなをここへ呼んだのは朝一で報告があったから。」 ももがそういうとみんなは一斉に顔を見合わせた。 「なんと、部員が目標に達しましたー!!ほら、みんなもっと盛り上がる!」 もものハイテンションは朝からきつい。みんな低いテンションのまま手を叩いて盛り上げる。 「なんかイマイチだなぁ、まぁ、いいか。一番最後の部員、清水佐紀ちゃんでーす!」 「・・・・どうも」 ももが引っ張ってみんなの前に出したのが、生徒会長さんだった。 みんな「えっ・・・」って感じで固まった。 ちょっと恥ずかしそうに下を向いてる生徒会長、・・・・ちょっと可愛い。悔しいけど。 「え、会長なんで」 「いやぁ、まぁ、いろいろあって」 「そ、そうですか・・・あ、でも嬉しいです」 「よ、よろしくね」 入り口付近で愛理といちゃついてた熊井ちゃんが声をかけた。 ビックリと言うか、唖然と言うか、そんな顔をしてる。 そりゃそーだ。全員、いや、よく見ると茉麻と梅田先輩はそうでもなさそう。 きっと知ってたんだ。確か、友達とか言ってたし。 「で、まぁ、紹介はここまで。とにかく嬉しくてさ、文芸部の存続はほぼ決定だし!」 「あ、あの!そのことでちょっと」 ももが嬉しそうに言った後、前田ちゃんが口を開いた。 125 :名無し募集中。。。:2010/03/18(木) 01 10 26.38 0 124 第386回 「あの、なんだっけ社会なんたらっていう同好会、一人増えて、文芸部と同じ人数みたいで・・・ 確か上回らなきゃいけないとか言ってませんでした?」 「そ。じゃなきゃ、ここは没収」 冷たい声で会長さんが言う。あぁ、やっぱり生徒会長だ。とある意味安心感。 「えぇぇぇ、ちょ、じゃあ明日までにもう一人集めなきゃいけないの!?」 「そういうことだよ、もも」 「ごめんなさい余計なこと言って・・・」 いや、前田ちゃんは悪くない。 なんだかその申し訳なさそうな顔、こっちが余計申し訳ないよ。ごめん。 だが、全員に、もれなく疲労感が襲った。それでなくても朝早くに呼び出されて 天敵生徒会長が仲間に入りまーすとか衝撃的なこと聞かされて さらにやっと集まってほっとしたところにまだ一人必要だとか知らされて。 ・・・・がっかりしないほうがおかしい。 ◆ 全員で、校門に立って勧誘をした。が、もちろんテスト前にそんなところに関わろうとする 奇特な人はいない。いるわけがない。もも以外は、当然わかっていた。 そこでうちとももはなんとかあいつを巻き込もうと、屋上へ向かうのだった。 174 :名無し募集中。。。:2010/03/22(月) 01 14 02.37 0 125 第387回 朝、部室に集められてまあ狭くて暑くていろいろあって、 私たちは校門で勧誘活動・・・だけど、まあ脈はない雰囲気。 飽きた私は校舎の間を抜けて、中庭のベンチに座った。 校門前の喧騒とはうってかわって、すごく静かな場所。 …と思ったら、一人付いてきたみたいだ。 「えーり、サボってんなぁー」 「飽きちゃった」 「あはは、私も」 舞美は疲れたのか小さく笑って、私の隣に座った。 そりゃそうだよね、朝早かったし。 …って私まだ正式に入るとは言ってないんだけどなぁ。 でもまぁ、文芸部は結構おもしろい。活動じゃなくて、・・・人のことだけど。 なんていうか、個性的っていうかさ。 「えり、試験終わったらデートしよう」 「へ?」 「へ?じゃなくて。約束だったでしょ」 「あぁ、・・・覚えてたんだ」 「当たり前じゃんか。えり、入部してくれて助かったし・・・うん」 舞美はちょっと恥ずかしそうだ。デート、なんて言ったせいかな。 かくいう私も赤くなってるわけで。 175 :名無し募集中。。。:2010/03/22(月) 01 15 07.29 0 174 第388回 「どこいきたい?」 「そうだなぁ・・・・どこでも」 「もう、またそうやって困る返事をするんだから・・・」 「舞美考えてよ。」 「えぇ・・・・うん、まあわかった」 照れくさそうに困ったように舞美は髪をいじりながら頷いた。 なんだかちょっと可愛い。きっとあんまり人に見せない無防備な顔。 「愛理ちゃんはいいの?」 「・・・・まだ考え中」 「デートするからには、吹っ切ってもらわなきゃ」 「・・・・・それはちょっと難しい」 「冗談だよ、いいよ別に。」 急にテンション、というかトーンの下がる舞美。 吹っ切ってるはずないか。 愛理ちゃん目当てでわざわざ東北から転校してくるんだもんね。 その本気度はわかってる。だからこそ、辛いんだけどさ。 でもあんまり考えると余計に辛いから、極力考えないようにしてる。 話をしているうちにチャイムが鳴って、私たちは教室へ急いだ。 …そういや、部員は本当に大丈夫なんだろうか? 部長さんが言ってた「心当たりあるから任せて」とは一体誰のことなんだろう。 …なんとなく、いや、なんとなくだけど嫌な予感がした。 まあ、でも今はとりあえず勉強に頭を切り替えよう・・・・。 230:名無し募集中。。。:2010/03/27(土) 00 54 38.96 0 175 第389話 お昼休みの屋上。 あたしが常駐してるとわかっているからなのか、誰もいない。 うーん、快適。静かでいいや。 そのうち、ももちゃんかみやが来るだろう・・・今日のお弁当はなにかなぁ。 と、お弁当を開こうとしたら神妙な顔したももちゃんとみやが現れた。 なんだろ? 「めぐちゃん、お願いがある」 「めぐ、真剣に聞くように」 「な、なによ?」 そういう風に切り出されると身構えてしまう。な、なんだ? 「文芸部入って」 「入って」 「え?いやだよ、てか前に断ったじゃん」 「緊急事態だから」 「めぐが入ってくれないと困るの」 「ちょ、ちょっと、、まず理由を言いなさい」 もう、そういう感じで言うのはやめてよね。 ちゃんと理由を説明しなさい。 …なんかこの2人って全然似てないと思ってたけどちょっと似てきた・・・。 ももちゃんが慌てながら、みやが適時訂正と補足をしながら説明してくれた。 ふむふむ。なるほどねぇ。 231:名無し募集中。。。:2010/03/27(土) 00 55 25.19 0 230 第390話 「・・・っとまぁ、そういうこと」 「だからさ、めぐ頼むよぉ」 「・・・・あと一人なんでしょ?じゃあどっちかのクラスから適当に・・・ていうか」 「なに?」 「生徒会長が入部ってそれネタじゃないよね?」 「そんなわけないよ、ももが入部させたんだから」 「・・・じゃあ、余計入るわけないじゃん」 二人から顔を背けて空を見上げる。悪いけど、入部は出来ないよ。 そりゃ、力にはなりたいけど。水と油なんだよ、あたしとその人。 それに、・・・他の子が嫌がるでしょ、あたしなんて。 「めぐちゃん、前に他の子が怖がるとか嫌がるとか言ってなかった?」 「あぁ、うん。今も思ってた」 「そりゃ初めはそうかもしれないよ、でもめぐちゃんそんな人じゃないじゃん?」 「そうだよ、あんな噂。愛理もめぐのことそんな人じゃないって言ってたし」 「そうだとしても・・・だめだよ」 むやみに近づいて怖がらせる必要はない。 あたしはこうして静かな場所にいられればそれでいい。それで幸せ。 「・・・村上さん、入ってください」 「あれ、前田ちゃん?」 「どうしたの?・・・って村上さんって言った?」 「憂佳、なにしてんの」 「え、憂佳!?」 「ちょ、めぐなに知り合い?」 みやとももちゃんが現れた憂佳にびっくりしてる。 あぁ、そうか知らないのか。あぁ、説明めんどいな・・・とりあえず今日はいいか。
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クリフトのアリーナへの想いはPart5 684 :【花嫁修業】1/8 ◆cbox66Yxk6 :2006/07/29(土) 04 18 09 ID PwYwV1lX0 サントハイム王は、その日も玉座で唸っていた。 「何とかいい方法はないものか・・・」 せっかく旅を終えて帰ってきたというのに、自分の傍にちっともいてくれない愛娘アリーナ。 もっとも、活発でじっとしていられる性分でない娘を、自分の傍に縛り付けておくことが不可能なことは重々承知なのだが、それでもやはり譲れない一線はある。 「ブライ、アリーナはどこにおる?」 「自室におられぬのなら、おそらくゴットサイドでしょうな」 またか!! 王はむっと口をへの字に曲げた。 そう、サントハイム王のイライラの原因はここにある。 傍にいてくれないというのは、寂しいが我慢できないことではない。 たとえアリーナがエンドールのカジノに入り浸っていようが、諸国漫遊武者修行の旅にでようが、はたまたモンバーバラのステージに立とうが・・・いや、それはさすがに問題があるかもしれないが、とにかくあやつのもとにさえ行ってくれなければ問題ないのだ。 だが、現実はどうだ。 せっかくクリフトをゴットサイドに派遣し、アリーナと引き離したというのに、愛娘は暇さえあればかの地を訪れているという。 知らず握り締めた肘掛けがぎりりと鳴った。 (どうすれば、あやつから娘を引き離せるかのう?) そう考えるもなかなかいい案が浮かばない。 無意識のうちに自慢の髭をもてあそびつつ、何気なく傍らの書簡に目をやったサントハイム王は、次の瞬間、瞳を少年のように輝かせた。 「これだ!」 突如叫んで立ち上がった王にちらりと視線を送ったブライは、「そういえば書庫に用事が」と口にしながらそっと立ち上がった。 (陛下、わしは関わりとうございません) 経験は人に生きる術を与える。 老いたりとはいえど、向上心豊かなブライはいままでの数々の経験から学んでいた。 ―――君子、危うきに近寄らず。 すわ、巻き込まれては一大事、と老人のものとは思えぬほどの軽やかな身のこなしで、御前を辞そうとしたブライだったが、踵を返した途端、その肩をがしっと掴まれた。 「ブライ、忙しいところ悪いんじゃが、ちと“余”の頼みごとを聞いてくれぬかのう?」 王が敢えて「わし」ではなく「余」という一人称を使うときは、国事に絡むといって大過ない。 否、たとえ絡まなくてもその言葉を耳にしては、逆らえるはずもなく・・・。 悲しきは、宮仕えの身。 この日ブライは王宮勤め50年の矜持を以って、必死に拒絶の言葉を飲み込んだ。 「え?花嫁修業?」 「そうですじゃ。姫様もそろそろ本格的に始めませんとな」 どんな命令が下るのか、内心戦々恐々としていたブライだったが、意外や意外、サントハイム王が命じたことは至極尤も、且つ、国にとっても重要なことであった。 (陛下がちゃんと国のことを考えておいでだったとは・・・) わしは嬉しいですぞ! 国の王たるものに抱く感想とは思えぬ失礼な言葉を胸のうちで呟き、ブライは感動に浸る。 (姫様の花嫁修業を真剣に考えてくださるとは) 教育係として仕え、いままでも何度となくアリーナの花嫁修業を奏上したにも拘らず、「まだ早いじゃろ」とまともに取り合ってくれなかった王が、ついに愛娘を手放す決意をされた。 その事実が、何よりも嬉しい。 (思えば、王の教育係として宮廷に上がったのがいまから50年ほど前・・・) 胸の前でこぶしを握り締め、思考の海に身を投じるべく目を瞑ったブライ。 その長くなりそうな老人の述懐を読んだのか。 アリーナは疑問をぶつけることで、ブライを現実にひきもどした。 「でも、今更何をするのよ。礼儀作法とか、刺繍とか、大体のことは城の女官に学んでいるわよ? これ以上、何を学ばせようというの?」 我に返ったブライはアリーナの言葉にひとつ頷くと、僅かに目を眇めた。 「そうですな。最近の姫様は以前と違って、そういった花嫁修業も(さほど)嫌がらずに頑張っておられましたからな。じいは嬉しく思いますぞ」 ブライに小言を言われることは多々あれど、滅多に褒められたことのなかったアリーナは、驚いて目を見開き、そして気恥ずかしげに頬を赤らめた。 そんなアリーナを微笑ましく見つめると、ブライは先程の質問に答えるべく再び口を開いた。 「強いていうなれば・・・そうですのぉ。行儀見習い、といったところですな」 「行儀見習い?」 「そうですじゃ。まぁ、なんというか。親元を離れてですな、その、いままでの勉強の成果を試すことを兼ねた、いわば精神修養のようなものですじゃ。そうそう、清貧を心がけるということも大切ですな」 「親元を離れて? ということは、どこかに下宿するってこと」 素敵、と目をきらきらと輝かせ、アリーナは問う。 「で、どこに?」 「一応候補としては、この修道院なんですがの。我が国と交流のあるエンドールにも程近く、また、サントハイム正教の修道院でもありますじゃ。まさにうってつけのところだと思いますがの」 アリーナの眉根が寄った。 「修道院? それって決定なの?」 「と申されますと?」 「だって、全然おもしろくなさそうなんだもの」 唇を尖らし、そっぽを向いたアリーナだったが、ふと視線を宙に彷徨わせると脳裏を過ぎったある考えに、ぽんっと手を打った。 「ねぇ、要するに花嫁修業の出来るところならどこでもいいのよね?えぇっと、つまりお料理やお裁縫の修業が出来て、さらにそれを指導できる人がいて」 「まぁ、そうですな」 「礼儀作法にも厳しく且つ精通していて」 「うむ」 「そのうえ、清貧な生活の出来るところならいいのよね?」 「我が国は宗教国家でもありますからな。できれば、宗教、サントハイム正教に明るい者がおる所が理想的ですな」 「もう、ばっちり! で、他にも何かある?」 「そうですなぁ。特にはございませぬが・・・ちなみにそんなところに心当たりがおありなのですか?」 「うん、まあね。それより、その条件を満たしていれば、絶対反対しないわよね?」 「まぁ、そうですな」 「絶対反対しないわよね? 確約してくれないなら花嫁修業なんてしないで、武者修行の旅に出るわよ」 アリーナの脅しに内心冷や汗をかきつつ――なぜなら彼女が武者修行を心に決めた時点でそれは回避不能になることがわかっていたから――先程の言葉を反芻していた。 (料理裁縫の修行ができ、礼儀作法の指導ができる人物がいて……うむ、特に問題ないじゃろ) いつになく強気のアリーナに、僅かな不審を抱きつつも、ブライは大きく頷いた。 「まあ、よろしかろう」 その瞬間、アリーナが飛び上がって喜んだ。 「ありがとう、ブライ。私、頑張るわね」 じゃ、いまから行ってくる、と走り去ろうとしたアリーナに、ブライは慌てて声をかけた。 「姫様、で、どちらに参られるんですじゃ?」 ブライの言葉に、一瞬だけ振り向くと、アリーナはにっこりと笑って答えた。 「ゴットサイド。クリフトのところよ!」 「え?ちょっとお待ちくだされ。わしが申し上げたのは……」 申し上げたのは? 料理、裁縫の修業ができ、礼儀作法に精通し、清貧の志を持った、サントハイム正教を教示できる者がいるところ……。 「あーーーっ、し、しまった!! 修道院という言葉に惑わされて、『女性だけのところ』と言い忘れておったわい」 言質を取られてしまうとは、何たる失態!! その事実に突き当たると、ブライは頭の先からつま先まで真っ青になった。 「えらいこっちゃ」 慌てて自室に向かい駆け込むと、ブライは急いで荷物をまとめ始めた。 「のう、ブライを見かけなかったか?」 サントハイム王の問いに、明日の謁見の順番を確認していた大臣が手元から目を上げ答えた。 「先程、何やらものすごい勢いで自室を飛び出していかれるのをお見かけしましたが?あぁ、それにしてもあのように慌てたブライ様を拝見するのは初めてでした。まさに青天の霹靂と申しましょうか・・・」 大臣の言葉に、王は首を傾げる。 (慌てていた?ブライが?) 不思議なこともあるものだ。 そう感じたものの、根っから楽天的なサントハイム王はむしろそれを吉事と受け取った。 (おぉ、もしかしたら『膳は急げ』というやつかの!) 心の文字を読むことができたなら、「善」ですぞ!っと突っ込みを入れられそうな間違いを犯しつつ、王はにこにこと笑う。 「して、ブライは?」 喜色満面、今にも踊りださんばかりの上機嫌ぶりに、大臣は何事かと思いつつも、はっとしたように書簡の山を見つめた。 「そうでした。私、うっかりしておりました。先程ブライ様から陛下に書簡を預かって……。 あぁ、これです。申し訳ございません」 畏まって書簡を差し出す大臣に、王は鷹揚に手を振ってみせる。 そしていそいそと書簡を開き、そこに書かれた文字を追った。 『わしも花嫁修業に赴きたいと存じます。探さないでください。ブライ』 「なんじゃこりゃぁぁぁぁあぁーーーー!!」 その日が青天であったかは定かではないが、奇しくも先程の大臣の言葉が現実となり、サントハイムの玉間に霹靂が鳴り響いた。 蒼い髪の青年は、己の足元に三つ指ついてひれ伏す老人に困惑していた。 「クリフト、頼む。掃除でも洗濯でも肩揉みでも何でもするから、わしをここにおいてくれ!」 (終) 続き2006.08.01
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小傘でひとつ。 多々良小傘はお腹がすいていた。 「おおおぅ…」 ぐぅ~とお腹がなる。ふらふらと歩き、もう駄目かも…と小傘が諦めた時、前から一人の人間が歩いてきた。 小傘はにやりと笑い、その紫色の傘を振り回し、その男を追いかけた。 「う~らめっしやああああぁっ!!」 「ぎゃああああ」 やった驚いた!小傘はお腹が満たされていくのに満足した。しかし同時に疑問を抱いた。 …? この人間の味、少し違う。みんなより、甘い。 小傘はその味が気に入った。 人間は既に居ない。 また明日も通らないかな、と思いながら小傘は静かに眠りについた。 次の日。 その人間が昼に通りかかったので、私は近付いて、話をしてみる事にした。 「あの…」 「ん?」 その男は、疑問を投げかけてきた。 とりあえず私は自己紹介をし、暫くお話をした。 どこか違う所でもあるのかな?と、確認しながら。 でも、普通の人間だった。 その男は○○と言った。ふうん。 夜。 また来た。なんだろう。 とりあえずお腹がすいていたので、驚かした。 驚いてくれたのでお腹が膨れた。 次の日。 また昼、通ったのでお話をした。 何をしているのか聞いたら、ただ健康の為歩いているだけらしい。 「あぁ、そういえば小傘ちゃん髪の毛さらさらだね。」 といって来たら、なんだか心の中がきゅうってなった。 ………なんだ? また次の日も、次の日も、いつまでも。 ○○は散歩しにきて、私が驚かしてお腹を膨らす、という日々が続いた。 でも、○○への気持ちは恋へと変わっていった。 そしてそれを自覚していくたび、○○の味は甘くなっていく。 …いひひ。 ○○のこと、もっと好きになっちゃいそう。 ある夜。○○を驚かそうと私はスタンバイしていた。 でも、その日の○○は一人じゃなかった。 隣に緑巫女がいた。 何で、いるの。 何で、笑うの。 何で、頬を染めるの? 疑問。と同時に○○への気持ち湧き上がる。 ○○は私のもの私のもの。 それを何で、あんたが持っているの? 私の中で何かが湧き上がる。 ……あいつさえいなければ。 私が考えている間あいつと○○は別れた。 今だ。 「ねえ」 「ひぃっ!?」 緑巫女は驚いた。だけど○○みたいな味がしない。苦くて不味くて、吐きそう。 「ななな、何!?あ、小傘さん…」 私はこいつに蹴りをくらわし、首を絞める。 きっと驚いているのだろう。 まずいまずいまずいにがいにがいにがい。 「○○!」 次の日○○に声をかけた。 すると、○○は落ち込んでいた。 なんと、あの緑巫女は恋人だったいうのだ。 死んだという知らせを聞いてこの有り様だ。といった。 だから○○に教えた。あのゴミなら片付けたよ。幸せになろう。と。 すると○○は鬼の形相で私に襲いかかってきた。○○? 「お前かっ…!ただの妖怪風情が!小傘あああああっ!!」 あ…○○。名前呼んでくれた。幸せ。 あ…意識が遠のくなぁ。最後かなぁ。 じゃあ言っておこう。 「大、好き。」 目の前の妖怪は動かなくなった。…言うに事欠いて、好きだと?俺の好きな早苗はお前が… でも、それでも。妹のように見ていたこの娘が愛おしくて、 動かないこの妖怪を抱きしめ続けた。 勢いで書いた結果がこれだよ!
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Side K 外はもう暗くなってる。 もしかしたら、お泊りかな? あ〜ちゃん、大丈夫だよね? のっちがついてるし、ね。 てかのっち。何か一言くらい返信よこしなさいよ。 はぁ 今日はなんだか部屋が広いな… …お風呂入ってこよっと。 お風呂から上がると、消したはずのリビングの明かりが点いていた。 まさか…。 「あ〜ちゃん?」 「ただいまw」 くるっと振り返ったあ〜ちゃんの顔からは、今朝の泣き顔なんて結びつかない。 やっぱり、あ〜ちゃんにはのっちが一番なんだね 「てっきり、のっちんち泊まって来るかと思ってた…。」 「ふふwのっちにも聞かれたけど、帰ってきちゃった。」 「なんで?」 「え?だって何か、ゆかちゃんに会いたくなったんだもんw」 なにその台詞は、嬉しいじゃん。 だから抱きしめた。 「ずっと心配だった…。」 「…ぅん、ありがとう。もう、大丈夫だよ?」 「あ〜ちゃん…。」 そっと体を離して名前を呼ぶ。 「ん?」 「のっちと住んだ方が、良いんじゃない?」 自然と口から出た言葉 「??何で?」 「私じゃ、助けてあげられないこと、いっぱいあるから。」 実際そうだと思う。 「そんなことないよ。あたしずっと助けて貰ってるよ?」 「今日だって、そう。あ〜ちゃんの涙、拭い切れなかったし…。」 ああ…。何ネガティブになってんだろ…。 視線が、あ〜ちゃんの顔から下がっていく。 「…ねぇ、ゆかちゃん。」 「ぅ?」 ふっと顔を上げると。 「ゆかちゃんは、あたしが居ない方が良いの?」 「ヤダ。」 即答したらあ〜ちゃんに笑われた。 「あのね?ゆかちゃん。あたしの弱いトコとか、辛い時に一番最初に受け止めてくれてるの、いつもゆかちゃんなんだよ?彼でものっちでもなくて…。あたしがずっと歩いてこれたの、ゆかちゃんが側に居てくれたからなんだよ?ゆかちゃんの存在…おっきいんだからw」 「あ〜ちゃん…。」 なんか、こんな風に思っててくれたんだと思ったら、嬉しくって言葉に詰まる。 「それにぃ!あたし居なかったら、ゆかちゃんご飯食べられないで死んじゃうでしょw?そんなの御免だよw」 なんて冗談を言いながら笑うあ〜ちゃん。 ははwそうだったw 「…うんw」 「あたし、のっちと居る時と同じくらい、ゆかちゃんと居るの幸せだって感じるの。それってすごい贅沢だなって思うんだ…へへw」 あーもう!何でこの子は私が喜ぶ事を、こうポンポン言ってくれちゃうのかねぇ? 嬉しくてまたキュッと抱きつく。 「あ〜ちゃん大好きw」 「へへwあたしも好きだよ?」 あ〜ちゃんが良いと言ってくれるなら、のっちには悪いけど、まだ一緒で良いよね? 不意に私の携帯が鳴る。 誰だろ? あ、のっち。 あ〜ちゃんココに居るのに、今頃なんの返信よ? メールを開くと —いつも、あ〜ちゃんが落ちないように、抱きしめてくれてありがとう! ゆかちゃんのお陰で、のろまなのっちでもあ〜ちゃんを助けに行くの間に合うよw …なにコレw 私が居なくても、間に合うようにしなさいよw まったく世話の焼けるヤツめw でも、そのメールで心がほっこりした。 自分が二人に必要とされてるんだなって、嬉しくなった。 「何?面白いメール?」 気付かないうちに笑ってたみたいで、あ〜ちゃんが聞いてきた。 「えw?あぁ、うんwあ〜ちゃんものっちも可愛いなって思ってw」 「ん??」 なんだか分からない顔のあ〜ちゃん。 大丈夫、それで良いよ? たぶん、最近あ〜ちゃんが自分から離れて行ってると思って、そのうち一人になっちゃうのかなって不安だったのかも。 だって普通、好きな人と長く一緒に居たいって思うもんでしょ? でも、あ〜ちゃんの中の私の位置は全然変わってなくて、ただそこに、のっちが増えただけなんだね。 私にとってののっちは…同士かな? 恋人として 友として あ〜ちゃんを守るって気持ち。 私に好きな人がいても、そこは変わらないから。 二人を、ずっと見守って行くんだ そしたら、絶対幸せだもんw あ、そうそう 今年の誕生日が、今までで一番幸せだったのは言うまでもない…かw —fin—
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「しかし、それが本当なら工藤新一は一体どこに?」 「さぁな。すこし探りをいれている。嘘の可能性もあるからな。」 「だが、バドワイザーがデマを流したことは・・・」 その時、1人の女性が入店して来た。 「(ベルモット!)」 入店してきたのは組織の一員、ベルモットだった。 「どうした。ベルモット?」 「あなたが、調べろって言ったから調べたわよ。バドワイザーの過去。」 「どういうことですかい?」 「A secret makes a woman woman.」 「どうだったんだ?ベルモット!」 「ジンが言う通り、バドワイザーは一度組織から追放されているわ。ガス室から消えたらしいわよ。シェリーのように。」 「シェリー・・・」 「あの女の消息はまだですかい?」 「あぁ。分らねぇ。」 「それよりジン、1つ気になることがあるんだけど。」 「なんだ?ベルモット。」 「バドワイザーって何歳?」 「知るか!聞いたことねぇよ。」 「そう。ならいいわ」。 ベルモットは困った顔をしていた。 「ね、ねぇ、蘭姉ちゃん?」 「ん?何?」 「博士たちってまだ来ないの?」 「そろそろ、家を出るころだと思うよ。でも、どうして?」 「え?いや、来るのが遅いかな~と思って! ちょっとトイレ行ってくるね!」 コナンは、急いでトイレに向かい阿笠はかせに電話を掛けた。 「あ?博士か?今どこにいる?」 「ん?どうしたんじゃ新一?今、わしの家じゃぞ。そろそろ家を出るころじゃ。」 「灰原は?」 「地下の研究室じゃ。どうかしたのか?」 「絶対に杯戸レストランに来るんじゃねぇ!」 「どうしてじゃ?理由もなく来るなと言われても哀君が。」 「奴らだよ。黒ずくめの男たちが今、話してるんだ。」 「な、なんじゃと!?」 「っし!声がでかすぎる。灰原には悪いが、お客が多くて店を追い出されたとでも言って家から出させないでくれないか?」 「じゃが・・・」 「心配ないわ。家から出なければいいんでしょ?」 「は、灰原!?」 地下室から来た灰原に聞かれてしまった。 「そのかわり、あなたもそこから逃げなさい!」 「あぁ、分かってるよ。」 そう言うとコナンは電話を切り、蘭のもとへと向かった。 「あのさ、蘭姉ちゃん、今博士から電話がかかってきて発明品の修理を手伝ってほしいんだって。だから戻るね!」 「え?あ、ちょっと!」 コナンは走って、店を出て行き阿笠の家に向かった。 その時、ベルモットはコナンが店を出るのを見ていた。 「(あの子・・・)」 「ベルモット。どうかしたか?」 「いいえ。別に。」 ピリリピリリ ジンの電話が鳴っている。 「俺だ。」 「思い出したかな?」 「何のことだ?バドワイザー!」 「工藤新一のことだよ。ジン。」 「ちょっと、ジン、代わって。」 「ベルモットに代わるぞ。いいか?」 「構わない。」 ジンはベルモットに電話を渡した。 「何でしょうか?」 「初めまして。バドワイザー。ちょっと時間あるかしら?話したいことがあるんだけど。」 「いいでしょう。場所と時間は後ほどでいいですか?」 「えぇ。」 ベルモットは電話を切って、ジンに渡した。 「どういうことだ?」 「大丈夫。探りを入れるだけよ。安心して、ジン。」 つづく
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【フェードイン、屋外(大学生になりました)】 誠司 「好きなんだ…」 大輔 「はい?」 状況がよく見えない。 今日は確か、いつも小春と誠司、俺で昼飯を食べてるんだけど、小春がサークル の集まりとかで一緒に食べられないから二人で昼飯を食べることになったんだ。 誠司 「たまには、さ…学食じゃなくて違うとこで食べねぇ?」 誠司が珍しくそんなことを言ったもんだから二月の寒空の下、嫌々大学の中庭の ベンチに腰掛けてパンを頬張っていたんだった。 そう、覚えてる。 でもそれからどういう流れでこんなことになってるかは全く覚えてない。 だから俺が間の抜けた声を出してしまうのも当たり前と言えば当たり前なわけで 。 誠司 「だから…好き、なんだよ。高校3年の…夏くらいから」 【ドカーン】 何言ってんの、このひとーーーーッ!!? 大輔 「…え、や、お前…そーゆー趣味だったの…?結構付き合い長いけど、そう だったなんて気づかな───」 誠司 「気づいてなかったわけないだろ?!」 ガシッと誠司の両手が俺の両肩を掴む。 ヒイッ! 怖い…怖いっ!!! いつになく真面目な誠司の顔が怖い… 「あ、俺もしかしたら食われるのかな」 そう思った瞬間だった。 誠司 「小春とお前、一応幼馴染みなんだから小春に俺のこと勧めてくれよ!」 大輔 「……え、小春?俺じゃなくて?」 誠司 「…何キモイこと言ってんの」 素早く俺から身を離す誠司。 や、元はと言えばこんな人気のないところに連れ出す方が悪いだろ?! 大輔 「主語も無しに真面目な顔して言われたら誤解すんに決まってんだろーがっ !!」 誠司 「ちょ、マジ勘弁して。キモイ。俺に近寄らないで」 並んで座っていたベンチの端ギリギリまで身を離す誠司。 本当にムカツク… 誠司 「どうせ俺のこと、いつも薄汚れた眼で見てたんだろっ!?俺の体が目当て だったのねっ!」 大輔 「…………」 誰 か コ イ ツ を 黙 ら せ て く れ 大輔 「…で?小春のこと好きなんだ?」 誠司 「おう。だから協力してくれ!」 大輔 「…協力って、例えば?」 誠司 「例えば~小春をどうにかして俺の彼女にするとか?」 【ツッコミ】 大輔 「他人任せすぎだろ」 誠司 「頼むよ、大ちゃ~ん」 俺の肩を腕を回す誠司 近づくなって言ったり近づいてきたり忙しい奴だな… 大輔 「キモイ」 誠司 「つれないこと言うなよー、俺とお前の仲だろ。心の友だろ、俺たちっ!」 あれ、こういうのってどっかで… ああ、あれだ 大輔 「…お前さ、ド○えもん見たことある?」 誠司 「うん?あるけど」 大輔 「ジャ○アンてさ、お前に似てるよな」 誠司 「!!?」 大輔 「都合の良い時だけ友達扱いするとことか」 誠司 「…………」 大輔 「たまにちょっとだけかっこよくなって、実はいい奴みたいなポジションにいたと か」 誠司 「…………」 大輔 「ジャイ○ンって卑怯だよな、真面目に考えてみると」 【ドカーン】 誠司 「!!!」 大輔 「特に映画版のドラ○もんは───」 誠司 「…大輔はさ」 大輔 「?」 誠司 「俺にだけ毒舌だよな…」 大輔 「愛だよ、愛」 嘘だけど 誠司 「!…大輔ったらやっぱり俺のことそーゆー眼で…っ!」 【ツッコミ】 大輔 「ねぇよ!」 誠司 「ともかくだ。お前にしか頼めないんだよ!!なんとかならない?」 そのまま、ベンチから滑り降り、目の前で両手を合わせて土下座をする。 大輔 「なんとかって言われてもなー……俺にどうしろと……」 誠司 「そこは、ドラえも○の秘密道具とか」 大輔 「んなもんあるかッ!ていうか、そんな下心を叶える秘密兵器なんて登場しねぇ!!」 誠司 「…………ケチ(ボソッ」 大輔 「そういう問題かッ!?」 ……ったく。 こいつはホントに昔から変わらないな。 その元気さに、ある意味救われてたりするが。 実際、大学生活を楽しく過ごしてるのもコイツのおかげだし。 あんまり、認めたくはないけど。 …………たまには、協力してやるのも悪くはない、か。 大輔 「はぁー……わかった。少し考えてみるよ」 誠司 「マジかッ!?」 大輔 「あぁ」 誠司 「よっしゃぁぁぁぁ!!おぉ~心の友よ~!」 大輔 「うざい、くっつくな。そして、いい加減そのネタから離れろ」 誠司 「照れるな照れるな。もっとくっついてやろうか?」 大輔 「!…誠司ったらやっぱり俺のことそーゆー眼で…っ!」 誠司 「うん」 大輔 「そこは否定しろよッ!?」 誠司 「……いや~、でもよかったよかった。普通に断られると思ってたからさー」 大輔 「なんでだ?」 急に真面目に戻った誠司に少し違和感を覚え、聞き返す。 少し言いにくそうに頭を掻きながら、誠司は答えた。 誠司 「なんていうかさ……お前も小春のこと好きなのかなーって思ってたから」 大輔 「……は?」 誠司 「いや、お前の行動見ててそう思っただけ。でも、俺の勘違いだったみたいだな……っと」 誠司 「やべぇ、もうこんな時間か。わりぃ、講義受けてくるわ!」 大輔 「あ……あぁ、わかった」 誠司 「何か決まったらメール送っといてッ!じゃな!!」 誠司が、慌しく構内に戻っていく。 アイツが居なくなったあとには、静寂だけが残った。 俺が……小春のことを好き? 誠司の言葉が、胸を刺していく。 確かに、大学に入ってから可愛くなったとは思う。 でも、好きなのかどうか考えたことはなかった。 付き合うことは絶対にない。 ――だけど、誠司が小春のことを好きといってから、胸に引っかかっているこの気持ちは一体なんなんだろうか。 まさか、俺も小春のことを―― 大輔 「………さむ……戻るか」 雑念を吹っ切るように、勢いよくベンチから立ち上がる。 あるはずがない。 誠司と約束した手前、そんなことがあっては―――― 【場面転換】 小春 「遊園地?」 5限が終わり誰も居なくなった室内に、小春の声が響く。 俺は、昨日の作戦会議を思い出しながら、次の言葉を紡いだ。 大輔 「そ、遊園地。誠司と話しあってさ、もしよかったら今週の土曜にでも行かない?」 小春 「いきなりどうしたの?」 大輔 「あ~……大学に入ってから3人で全然遊んでないだろ?だから、たまにはと思って」 ホントは違うけど。 小春 「えっと、ちょっと待ってて。今、予定入ってないか調べるね」 そう言って、小春は手元に置いてあったカバンから手帳を取り出しペラペラとめくり始めた。 俺はその間に会議のおさらいをするべく、昨日のことを思い出す。 【場面転換】 誠司 『遊園地?』 大輔 『あぁ、それくらいしか思い浮かばなくてな』 誠司 『……なんか、大輔って意外と子供なんだな』 大輔 『切るぞコラ』 誠司 『いやん、大輔ちゃんったら怖い!!』 【電話を切る音】 【ツーツーツーみたいな音】 【電話がかかってくる音】 【ボタンを押す音】 誠司 『なんで切るんだよッ!!?』 大輔 『や、あまりにもウザかったからつい』 誠司 『やっぱり大輔って俺には毒舌……』 大輔 『あぁ、そうだな。で、続けていいか?』 誠司 『嫌』 【電話を切る音】 【ツーツーツーみたいな音】 【電話がかかってくる音】 【ボタンを押す音】 誠司 『冗談なのにすぐ切るなよ!!?これって結構傷つくんだ――――』 【電話を切る音】 【ツーツーツーみたいな音】 【電話がかかってくる音】 【ボタンを押す音】 誠司 『スミマセン、ゴメンナサイ、もう生意気なことは言わないので切らないでください』 大輔 『よし、続けるぞ』 誠司 『ハイ、よろしくお願いします』 【場面転換】 真面目なことしゃべってないなオイ。 ……まぁ纏めると、あとから俺が用事で抜けるということに落ち着き、今に至る。 ありきたりだけど、俺のちっぽけな脳じゃコレしか思いつかなかったのだからしょうがない。 小春 「あ、うん。大丈夫だよ、その日はなんにも無いみたい」 大輔 「ん、じゃあ10時に駅前集合で。そこからみんなで行こう」 小春 「りょうかいしました~」 大輔 「よろしく。それじゃあ、今日は帰るわ」 小春 「あ……ちょっと待って!!」 ドアノブに手をかけたところで小春に呼び止められ、後ろを振り向く。 大輔 「どうした?」 小春 「え……えっと……あの……」 大輔 「?」 小春 「もしよかったらだけど……今日、何も無かったら一緒に帰らない?」 小春の言葉に、少し拍子抜けする。 言いにくそうにしていたから、当日に用事があるのを思い出したのかと思ったじゃないか。 ……まぁ、それくらいなら大丈夫だろう。 大輔 「え?……あぁ、うん。別に構わないけど」 小春 「ホントにッ!?よかったぁ~……」 大輔 「よかった?」 小春 「へッ!!?あ、なんでもない、なんでもないよ!!」 小春 「あ、ちょ……ちょっと準備するから、出口のところで待っててくれないかなッ!?」 大輔 「あ……あぁ、じゃあ先に行ってるな」 小春 「うんッ!それじゃあ、またあとで!!」 ガチャン 俺は小春に追い出されるようにして、室内から退出した。 …………なんだったんだ? ……… …… … 【場面転換】 小春 「ハァハァ……ご……ゴメン、ま…待った!?」 大輔 「い……いや、全然」 待ったもなにも……あれから、まだ5分しか経ってないのにわけで。 わざわざ走ってくるとは予想外デス。 大輔 「…………大丈夫?」 小春 「う……うん、大丈夫」 大輔 「そっか、ならよかった」 小春 「うん」 大輔 「…………」 小春 「…………」 大輔 「あ~……それじゃあ、行くぞ」 小春 「うん、そうだね」 二人並んでゆっくりと歩く。 大輔 「…………」 小春 「…………」 ゆっくりと、ゆっくりと。 大輔 「…………」 小春 「…………」 周りの風景を楽しみながら。 大輔 「…………」 小春 「…………」 ウッキウッキワックワックたのし 大輔 「くねえぇえええええぇぇぇえええええぇええええぇぇぇえぇッ!!?」 小春 「きゃっ!?ど……どうしたのッ!?」 大輔 「ハッ!?わ……悪い、何でもない」 ……つい、心の声が。 って、何で無言なんだ。 というか…… 何 故 こ ん な に 重 い 空 気 ? 今まで小春と話していて、こんな風になったことなんて…… …………あぁ、そうか。忘れてた。 今日は、アイツがいないからか。 よく考えてみると、 3人一緒に帰ることはよくあった、2人で帰ることはこれが初めてだった気がする。 うわ、なんか気まずい…… 全部話題作りは誠司に任せてたから、俺から話しかけたことなんて両手で数え切れるくらいだし。 今更、趣味の話をするような段階でもない。 ……それに、誠司の『あの』言葉のおかげで小春を妙に意識して余計に―――― あ゛ぁ゛~もう!!こうなったのも全部アイツのせいだ!! 今度、何かを奢ってもらうことにしよう。 小春 「……ふふっ」 大輔 「……?何かあった?」 小春 「へ?」 大輔 「いや、笑ってたから。何か可笑しいことでもあっ……たな。さっきの奇声は忘れてくれ」 そりゃ、いきなり叫んだら誰だってそうなるだろう。 むしろ、引かないで笑ってくれてありがとう。切実に。 小春 「あ、違う違う。そのことで笑ったんじゃないよ?」 大輔 「…………?」 小春 「懐かしいな、っと思って」 大輔 「懐かしい?」 小春 「うん、柳君は覚えてないかもしれないけど……」 小春は懐かしそうに、目を細めながら上を向く。 そして、突然俺の方を向いたかと思うと―― 小春 「えいっ」 大輔 「ッ!!?」 俺の手を、両手で握りしめていた。 寒さに凍えていた手に、ぬくもりが伝わる。 小春 「昔、こうやって一緒に帰ったの思い出して……えへへ」 大輔 「そ……そんなことあったっけ」 小春 「もう10年以上前だけどね~」 そう言って、俺の手をジッと見つめる。 小春 「…………えっと、お願いがあるんだけどいいかな?」 大輔 「ん?」 小春 「久しぶりに……このまま帰ってもいい?」 大輔 「ハイッ!?」 いや待て、落ち着け。何でコレくらいで動揺してるんだ俺。 手を繋ぐくらい今までいくらでも……あるわけないからだよな、常考。 どうする、どうするよ俺!? 小春 「……返事が無いってことはOKってこと?」 大輔 「え、あ……あぁ。まぁ……」 小春 「やった!それじゃあ、行こっか」 大輔 「あ、おい!!」 満面の笑みを浮かべ、強引に歩いていく小春。 不覚にも、その笑顔にドキリとしてしまう。 しかし、同時に誠司に対する罪悪感が浮かんでくる。 …………まぁ、しょうがないことだ。 向こうから言ってきたんだし、あそこで断ったら気まずい雰囲気になる。 そう……これはしょうがないこと。 俺が言ったわけでは無いんだから。 ……… …… … 小春 「あ、私こっちだからここで大丈夫」 大輔 「ん、わかった。それじゃあ、気をつけてな」 小春 「うん、バイバイ。土曜日楽しみにしてるね」 大輔 「おう」 手を振りながら、歩いていく小春を見送る。 そして、角を曲がり見えなくなったところで―――― 大輔 「…………はぁ~」 盛大にため息をついた。 …………疲れた。 こんなに気を使って、喋ったのは何年ぶりだろうか。 ……って、何で気を使う必要があるんだ。 それじゃあ、まるで―――― 出てきそうになった言葉を急いで飲み込む。 これ以上は考えないほうがよさそうだ。 大輔 「土曜日……気が重いな」 首をあげ、空を見つめる。 この寒さのせいか、星が憎らしいくらい輝いていた。
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前ページ次ページゼロの黒魔道士 「いい季節ですよね!今なら、丁度タルブの『猫祭り』の季節ですし!」 爽やかな朝、初夏の風が、街道沿いを吹きぬけていた。 ルイズおねえちゃんの授業も、王室の結婚式がもうすぐっていうことで、ほとんどがお休みになったみたい。 ……その代り、「宿題多すぎ!」ってルイズおねえちゃんが叫んでたなぁ……学生さんって、ホント大変だ。 「……猫?なんで、猫祭りなの?」 「えぇと、元々はワイン蔵を荒らすネズミ退治の猫を慰労するお祭りだったらしいんですけど、 今はみんなで猫の仮装をしたり、お酒を飲んで夏の到来を祝う祭りなんです」 なんか、とっても楽しそうなイベントだなって思う。 でも…… 「ギーシュ~!もうちょっと笑顔になりなさいよ!暗い顔してると、幸せが逃げるわよ?」 ……キュルケおねえちゃんはとっても嬉しそうだけど、 ギーシュが、モットおじさんのところから帰ってきてずっと暗いままなんだ。 「――放っておいてくれ、頼む」 「ぎ、ギーシュ?私はあなたの味方だから、ね?例え女装したりしても……」 「あぁっ!?もう、言わないでくれぇぇぇ……」 なんか、とっても酷い目にでもあったのかなぁ……? 「そういえばほら、アニエスってどうなったの?例の鎧の……」 キュルケおねえちゃんが、ふと思い出したよう言う。 そっか、キュルケおねえちゃんも、あの夜はモットおじさんの所に行ったから知らないんだ。 「あぁ、鎧の姉ちゃんなら――」 「……『自分を見つめ直す』って書き置きだけを残して消えちゃったんだ……」 デルフの言葉を引き継ぐ。 アニエス先生は、あの夜、夕食をもっていってあげたら、いつの間にかいなくなってたんだ。 どこに、行ったんだろう……?“ブレイヴ・ブレイク”って病気、治ったのかなぁ……? 「う~ん、これだと締らないし――」 ルイズおねえちゃんは、相変わらず白い本を持って、うんうん唸っている。 「ルイズ~?あんたまだ詔できてないの?結婚式って、あと1週間ちょっとでしょ?」 「わ、分かってるわよ!あ、後はツメなのよ、ツメ!」 ……このお宝探しが、いい気分転換になればいいなぁ…… 「あ、タルブが見えてきました!」 遠くに、白い壁の家がいくつか重なるように見えてくる。 あれが、タルブなんだ。綺麗でのどかそうな村だなって思ったところに…… 「クェー!」 「……え?」 ……どこかで、聞いたことがあるような声が聞こえてきたんだ。 ゼロの黒魔道士 ~第三十六幕~ タルブ・de・○○ タルブの村は、丁度ダリの村を大きくしたような感じだけど、 雰囲気はずっと明るかった。多分、大人の人たちがちゃんと働いているし、 子供たちも外で元気に遊んでるからだと思うだ。 『猫祭り』の準備なのか、あちらこちらに猫のぬいぐるみや、猫の置物が置いてあった。 ……『猫ワイン』って、猫が入ってるわけじゃないよねぇ? 「で、シエスタ、この地図の×印なんだけど――」 「クェー!」 キュルケおねえちゃんの質問は、大きな声で遮られちゃったんだ。 「さっきから聞こえるけど、何の音?」 ルイズおねえちゃんが不思議そうな顔をする。 ボクの予想が正しければ、この声って…… 「あぁ、この声は、そこの厩舎ですね。見てみます?おもしろいですよ?」 「な、何なのよ、これ!?」 ルイズおねえちゃんは驚いていたけど、ボクはもっと驚いていたんだ。 その生き物の姿は、ボクが知ってるものより、ずっとくすんだ色をしていたんだ。 「クェーッ!」 でも、その声も、その臭いも、そのクチバシも、そのケヅメも、その大きさも…… 「クェ~!」 どこからどう見ても、その生き物は…… 「ちょ、チョコボっ!?」 「あら、ビビさん、御存じなんですか?」 ボクの知ってる、普通のチョコボは黄色い。卵の黄身と同じぐらいの鮮やかな黄色だ。 でも、ここ、タルブの馬小屋のようなところ(多分、チョコボ舎かな?)のチョコボは、 色がくすんだ白、ミルクを入れすぎた紅茶みたいな色をしていた。 でも、この鳥は、間違いなくチョコボだ。 人が乗ったり、土を掘ったりする、あのチョコボだ。 しかも、何羽もいる…… 「な、何なのよ、このおっきな鳥!?」 「――すごい匂いだね、これは」 他のみんなはルイズおねえちゃんみたいにおっかなびっくりしてたり、 ギーシュみたいにチョコボ独特のにおいに鼻をつまんだりしている。 「タルブ名物『ショコボ』です。畑を耕すときとか、荷物を運ぶのに使うんですよ?」 「え、『ショコボ』……?チョコボじゃないの?」 なんとなく、発音が違う気がしたんだ。 「えぇ、『ショコボ』……あら?ビビさんの発音、私のひいおじいちゃんと同じような言い方ですね?」 「ひいおじいちゃん……?って、いたたたたたたた!?」 横を向いた瞬間に、チョコボが、ボクの帽子をつついてきたんだ。それはワラとかの餌じゃないのに…… 「あらあら、ビビさん、気に入られたみたいですわね?」 そんな気に入られ方しなくてもいいんだけどなぁ…… 「や、やめ、やめてててててて!?」 チョコボの嘴って、地面を掘ったりするから結構鋭い。 それに、首の力もものすごく強いんだ。あと、足も速い。 ……襲われたら、かないそうにないなってふと思った。 「ハハハ、僕のライバルも鳥相手には形なしか!」 ギーシュがケラケラ笑ってる。うん、元気になったみたいで良かったけど…… ちょっと、その笑い方はムッとするなぁ…… 「いいかい、鳥っていうのは、こうやって首の下を……でっ!?」 チョコボを得意気になでようとしたギーシュは、おもいっきり頭の上にケヅメが振り下ろされた。 ……チョコボって、すっごい器用だなぁ…… 「フフッ、ミスタ・グラモンも気に入られたみたいですね」 シエスタがクスクス笑う。ボクも、つられてちょっと笑った。 「ギーシュ~、なさけないわねぇ~!ところで――荷物ぐらい置きたいんだけど?」 ルイズおねえちゃんも久々に笑ったみたいだ。うん、良かった。いい気分転換になったみたいで。 「あ!そうですね!それじゃぁ、私の家に向かいますか」 「いたたたたたたたたた、髪の毛に絡まる!?絡まってる!?」 「じ、じっとしてなさいよギーシュ!今取るから――」 モンモランシーおねえちゃんがギーシュの頭からケヅメを取り除く間、 そのチョコボはうれしそうに「クェーッ!」と鳴いていた。 ……流石に、ちょっと痛そうだから、ボクも手伝ったけど、 ギーシュの髪って、ちょっと癖があるのか、チョコボのケヅメにうまいこと絡まってて…… 「いだだだ!?抜ける抜ける抜ける!?」 ……長い時間を費やして取れたけど、あとちょっとで、 コルベール先生みたいになっちゃってたかもしれないなぁと思ったんだ。 ・ ・ ・ シエスタの実家は、風車が目立つちょっと大きめのお家だった。 風車って言ったけど、普通の板みたいな大きな羽が縦にゆっくり回るものだけじゃなくて、 お椀みたいな小さい羽が横にグルグルと素早く回っているものや、 お花みたいな形で一が通り過ぎるたびに回るもの、 風じゃなくて、実際は脇を流れる川の水車の動力で回っている偽物の風車もあって、 なんか家全体までグルグル回っているような印象を受けた。 「ひいおじいちゃんが大好きだったんですよ、風車」 ……大好きって言うにしても、程がある気がするなぁ…… 「ただいま帰りましたー!」 「まぁまぁまぁ!?貴族の方々まで!?粗末なあばら家にわざわざお越しいただくとは――」 シエスタのお母さんかな?シエスタより少し背が低くて、ちょっとふっくらした感じの女の人が出迎えてくれた。 そのお家の中は、外よりも、もっとすごかった。 あちこちに、木で作った馬車の模型や、歯車の組み合わさった鉄の塊が転がっていて、、 ガラスの筒の中では色とりどりの球体が浮かんだり沈んだりしている。 「――あばら家、っていうより――何かの研究室みたいな雰囲気ですわね」 モンモランシーおねえちゃんが、一瞬『物置』って言いそうになったのが分かった。 でも、これだけゴチャゴチャとよく分からない物が並んでるって、確かに物置っぽいけど、 なんとなく、ワクワクしないかなぁ?キュルケおねえちゃんじゃないけど、お宝の山って感じで。 「大体が、ひいおじいちゃんの発明品なんです」 シエスタがお茶を入れるのか、ヤカンを火にかける。 そしたら、そのヤカンがクルクルと回りだして…… 「え?どういう仕組みなんだい?」 ギーシュも不思議に思ったのか、大きめのテーブルにつきながら聞いたんだ。 「あぁ、これもひいおじいちゃんの発明で――ほら、上に風車の羽がありますよね?」 かまどの上の方に、外にあった大きな風車を、ずっと小さくして横倒しにしたものがあった。 そこから、軸が上に伸びて、歯車を伝って、かまどの下の方にクルクルという動きが伝わってる。 「なるほど、湯気を利用した動力ということか」 「そうなんです、これで、まんべんなく熱が伝わるという仕組みなんですよ!」 「ふむ、おもしろいね!肉を焼くときも使えるのかな?」 ギーシュは素直に感心してるけど、おねえちゃん達はちょっと退屈そう。 ……うーん、男の子と、女の子の差、なのかなぁ? 「えーと、ところで、シエスタ?この地図なんだけど」 「え?あぁ、はいはい、その紙、ですね?」 キュルケおねえちゃんは、早く×印のついている場所に案内して欲しくてたまらないらしい。 「で、この地図のこの印のところって、結局この村のどこに――」 「そんな場所、存在しませんよ?」 「……え?」 ボクは、いや、他のおねえちゃん達も、耳を疑ったんだ。 「ほら、さっき厩舎にショコボがたくさんいましたよね?あの子たち、畑を耕すときにがんばってもらうんですけど、 そのとき、地面から色々見つけちゃうんですけど、こういった紙もよく見つけて……ほら!」 ……今、気づいたんだ。それは、おねえちゃん達や、ギーシュも同じだったみたい。 部屋の壁一面が、キュルケおねえちゃんの持っている地図とほとんど同じもので埋め尽くされているってことに…… 「ちょっとした壁紙にしたりすると、味のある模様なのでお土産として売ってるんです。タルブの密かな名産ってところですね。 ショコボの落書きっていうことで、『ショコ・グラフ』という名前で……」 キュルケおねえちゃんの笑顔が、貼りついたみたいに引きつっていた。 「――ま、待ちなさいよ?あなた、この地図は『タルブの』って……」 「?えぇ、ですから、その紙が『タルブの』名産品と申したつもりでしたが……あの、何か不都合が?」 お茶っ葉を探しながら、シエスタが首をかしげる。 ……そっか、『タルブの“描かれた地図”』じゃなくて、『タルブの“お土産”』なのかぁ…… なんか、言葉って難しいなぁって思ったんだ。 「それじゃぁ、この地図って……」 ルイズおねえちゃんが、気の毒そうな表情になる。 「むかーし、貴族様方に調べてもらったんですがね?いやまさか大切な紙だったら大変ですし」 シエスタのお母さんが、カップを出すのを手伝いながらしゃべる。 シエスタと、シエスタのお母さんは、キュルケおねえちゃんの事情には全然気付いてないみたいだ。 「その結果、『こんな場所はハルケギニアではありえない』ってことで、大昔の落書きってことになったみたいですね」 コポコポと、熱いお湯がお茶っ葉の上に注がれる。 お茶の葉が、その熱でふにゃふにゃになるみたいに、キュルケおねえちゃんの体から力が抜けていくのが分かった。 「そ、そんな~……」 「あー――えー、そのー……」 ギーシュが、かける言葉につまっている。 「何というか、古物商って、あこぎねぇ……」 ルイズおねえちゃんも、かぶりをふる。 流石に、壁紙と、お宝の地図だと、値段もすごく違うはずだよね? ……なんて言ったらいいんだろう…… 「――御愁傷様、ね」 モンモランシーおねえちゃんの言葉って、大抵鋭くて、的を射てると思うんだ…… 「高かったのにぃぃぃぃぃ~!!!」 キュルケおねえちゃんは、テーブルにへにゃ~ってつっぷしちゃった。 なんか、ものすごく疲れきった感じがする。 「……あ、シエスタ?シエスタの、ひいおじいちゃんって……」 なんとなく、話を別なところに持っていった方がいいかなって思って、シエスタのひいおじいちゃんのことを聞くことにしたんだ。 「あ、私のひいおじいちゃんですか?」 『ひいおじいちゃん』って言うときの、シエスタの顔がちょっと誇らしげだった。 「この子、ひいじいさまっ子て言えばいいんですかね、小さいときに死んじまったってのに、ずっと好きだったみたいでねぇ」 シエスタのお母さんがそう苦笑しながら、お茶のカップを配る。 お茶は、ミントの香りが強い、ハーブティーだった。とってもすっきりした香りで、飲みやすい。 「だって、ひいおじいちゃん、色々作ってくれて、とっても楽しかったんだもの!聞いたこと無い話してくれるし!」 なんか、小さい子に戻ったみたいな口調になるシエスタが、ちょっと可愛らしかった。 「まったく、この子ったら――ひいじいさまはね、元々はこの村の者じゃないんですよ」 「あ、そうなんだ……?」 「大昔に、ショコボにまたがってこの村にやってきたそうでしてね。 あんな大きな鳥は見たこと無いってことで村中大騒ぎになったと聞いております」 あれ?でも、そうすると、チョコボはそのときからずっと生きているってこと? 「あの、じゃぁ……今いるチョコボって……」 「あぁ、今のショコボは、ちょっと貴族様に頼んでね、何しろ役に立つ鳥だもんですから。 南方の方に住むオストリ鳥っていう大きな鳥と交配させた子孫なんです」 あぁ、だから普通のチョコボとは違う薄茶色なんだ。 「あ、そうそう!ビビさんのショコボの言い方、ひいおじいちゃんと似てない、お母さん?」 「あら?そういえばそうねぇ?もしかして、ご同郷なのかしら?」 そういえば、ボクはロバ・アル・カリイエってところから来たことになってたっけ。 ……うーん、どうしよう。そっちの方の話をされたら、とてもじゃないけど話をあわせられないなぁ…… 「あ、ならひいじいさまの手帳、読めなさるかもねぇ?あの訳分からないこと書いてある手帳」 どうしよう、今更違うって言ってもしょうがないし…… 「あぁ、あったあった!時計の所に隠してたんだよね?」 シエスタが、時計(って言っても、歯車がむき出しで、文字盤が無かったから、時計にはとても見えなかった)の針を、 無理やり逆回転させると、カチッと小さな音がして、歯車の一部が外れた。 「これなんですけど、ビビさん、読めます?方言なのかなって最初は思ったんですけど、綴りや文法がところどころ変で……」 どうしようって思ったけど、そのあちこち黄ばんだ手帳を見せてもらったんだ。 表紙は、真っ赤な皮でできている手帳だった。あちこちについている焦げ痕は、ロウソクでつけちゃったのかなぁ? 読めなかったらどうやってごまかそうって思いながら表紙をめくったんだ。 そしたら、聞き覚えのある地名が、そこに書き記されていたんだ。 「……『リンドブルム大公、シド・ファブール8世を尊敬して』……え!?」 リンドブルムって……あの!? ・ ・ ・ 手帳を読み進めていくと、やっぱりあのリンドブルムだったんだ。 飛空挺の国、大きなお城のある街並み、人がいっぱいで目が回った、あのリンドブルムだ。 シエスタのひいおじいちゃんの名前は、『シド・ランデル』。 「え、ビビの故郷って、平民でも苗字があるの?」 ルイズおねえちゃんが口をはさんだ。 「う、うん……めったに使わないけど……」 ともかく、シド・ランデルさんは、リンドブルムの工業区で生まれたらしい。 ……アレクサンドリアの侵攻で、つぶれてしまった工業区のことを思い出すと、 ちょっといたたまれない気持ちになっちゃったんだ。 少しだけ、そうした気持ちになりながら、先を読む。 そのときの大公、シド・ファブール8世にあやかって名前をつけてもらったらしい。 (ボク達を色々世話してくれた、カエルになったりブリ虫になった人は確か9世だから、そのお父さん、かな?) ともかく、ランデルの方のシドさんは、そのときの内戦を憂いたリンドブルム大公に共感し、飛空挺の開発に携わったんだって。 手帳の最初は、そうした自分の人生を振り返り、飛空挺を作るにあたっての心意気からはじまっていた。 曰く、『技術者たるもの、常に新しきことを目指せ!』とか、 曰く、『技術者たるもの、完成図を思い描け!』とか書いてある。 汚い字で、技術者っぽくてそっけない文章だけど、熱意がすごく伝わってくるな、と思うんだ。 「やっぱり、ビビさんと同郷だったのですね?文法がおかしくて私たちでは意味が分からなかったのに……」 そういえば、ボクがこっちの本を読もうとしたときも、文法や綴りが違うなって思ったっけ。 きっと、ちょっとずつズレてるんだと思う。 手帳は、いくつもの数式やアイディアのラフ・スケッチが続いた。この辺はぜんぜん分からない。 ところどころに、『もっと強度が?』とか『要確認!』といった走り書きが飛び出してくる。 手帳の1/3まで来たところで、箇条書きのまとめが書いてあった。 『霧機関』っていうものの完成と、その問題点について、だ。 「『霧機関』って何だい?」 「えぇと……ボクもあまり詳しくないんだけれど……」 ギーシュの質問に、断りをいれてから答えようとしてがんばる。 っていっても、詳しい仕組みとかは全然知らなかったんだ。 そもそも霧っていうのが、魂が星を循環するときに発生する副産物ってことぐらいしか知らなくて、 (ボクが霧で作られてるってことは、あんまり言いふらしたくなかったし) 「えっと……霧は、強力な魔力をもった煙、かなぁ……?」 このぐらいの説明しかできなかったんだ。 「ということは、風石の代わりに、その霧というものを使って船を飛ばすということか」 ギーシュはこうした機械の仕組みとかには頭がよく回ってくれるみたいで助かるんだ。 「で、えーと……ランデルさんの書いている問題点は……」 『霧機関』は、ボク達が旅をしたおよそ50年ぐらい前からずっと使われてきたものだった。 でも、ランデルさんは、その霧機関に問題点を見つけていたみたいだ。 霧の存在する低高度でしか使用ができないこと、 (山地を越えることが難しいって書いてある。だから、南ゲートが開発されたのかなぁ?) 霧の大陸の外、例えば外洋には出れない可能性があることが書かれてあった。 その問題点を解決するヒントを探しに旅に出て…… 「チョコボに乗ってたときに、霧に飲み込まれた……?」 そこが手帳の丁度半分まできたところで、数式や絵じゃない、文章の続くページが始まっていた。 ランデルさんは、深い霧の中、目を思わずつぶっちゃって、次に開いたときにはまったく霧の無い、青空の下にいたらしい。 「『植物:既知の生態系とは異なる。 動物:同種のものもわずかながらいるが、植物とほぼ同じく。 結論:霧の大陸では無いと推察される』……なんか、すっごく淡々とした書き方だなぁ……」 実際は、もっと驚いたんじゃないかと思うんだけど、民家を探してとにかくチョコボを走らせたらしい。 そうしてたどり着いたのが…… 「それが、この村ってわけなんですね!あー、なんかひいおじいちゃんのことが分かってうれしいです!」 シエスタがにっこり笑った。 タルブにたどり着いたランデルさんは、帰り道も分からないし、この村に住む決心をしたって書いてあった。 何より、『ここの技術の無さは逆に自分を刺激する』って書いてある。 技術者魂ってことなのかなぁ……?なんか、尊敬してしまうんだ。 あとの手帳は、風車の設計図メモや、ちょっとした日記が続いていた。 おもしろかったのは、シエスタのひいおばあちゃんへの告白をしようと考えたらしいところのメモで、 「『ラブレター作戦:問題点→当方に文才なし。 代筆の可能性?→誠意が伝わらない! プレゼント作戦:問題点→彼女の好みは? 誰かに聞く→誰に?誰にだ!?』……だって」 「なんか、いつの時代も同じだねぇ」 ギーシュが苦笑する。 なんか、いつの時代も恋する人って大変なんだなぁと思って、ボクもちょっと笑った。 ・ ・ ・ お昼ごはんまで、こうやってまったりとシド・ランデルさんの手帳を読んだり、 ランデルさんの発明品をシエスタに説明してもらったり、 ワイン蔵を見学しながらすごしたんだ。平和な旅って感じで、本当いいと思う。 ……1人を除いて、だけど…… 「あの、古物商め~……」 キュルケおねえちゃんは、シエスタの家で、ずっと『猫ワイン』を沢山飲んでいたみたい…… あんまり、飲みすぎると、体に悪いと思うんだけどなぁ…… ピコン ATE ~歌劇を見ながら~ その日の昼ごろ、ゲルマニアの劇団によるトリスタニアでの初舞台が行われていた。 タニアリージュ・ロワイヤル座を汚す行為であるとの指摘もあったが、 この度の婚姻による文化交流の一環ということと、ゲルマニアで一番人気の劇団であるということで、 無理やり反対派をおさえての開幕となったわけだ。トリステインの目の肥えた客は受け付けないのではと考えられたが、 怖いもの見たさという奇特な客がそれなりいたのか、客席はほどほどに埋まっていた。 「♪愛しの 貴方は 遠いところへ?♪」 主演女優の歌声が舞台から響く。なるほど、舞台映えのする美人だ。 「♪色あせぬ 永久の愛 誓ったばかりに♪」 しかし、ありきたりの美人だ。この程度ならば、この間、貴族警護役で雇った女騎士と同程度ではないか。 そう高等法院長であるリッシュモンは、眠たげな表情で舞台を眺めながら思っていた。 「ありきたり、といえばありきたりですな。内容を含め」 どこで考えが漏れたのか、横に座った男がそう呟く。そう、そのとおり実にありきたりな内容だった。 なんといっても単調だ。亡国の姫と、それを巡る男たちの話。使い古されている。 「――確かに、これが人気舞台となった理由がはかりかねるな」 単調な上に不謹慎な内容であるなとリッシュモンは思っていた。 何しろ、一人の男は亡国の戦士であり、もう一人の男は対立国の王子だ。 どことなく、今回の婚姻のあてつけと思われてもしょうがない。 しかし、このような風刺的な演目を行うのも、ゲルマニアらしいと言えばらしいか。 「あぁ、それには事情があるらしいですよ。なんでも、ヴィンドボナの講演でハプニングがあったとか」 「ハプニング?」 少々、興味が魅かれた。舞台では、主演女優が花束を投げ、消えた男に再び愛を誓うという名場面だったが、 男の話の方がよっぽどおもしろそうだ。 「そう、ゲルマニアで公演中に、クラーケンの仲間らしき巨大なタコが演劇中に乱入したそうでしてね。隣の見世物小屋から逃げだしたとか」 何とも間抜けな話だ。見世物小屋の管理体制はどうなっていたというのだ。 これだからゲルマニアは、と愛国心をあまり持ち合わせていないリッシュモンでも呟いてしまう。 「ほう?それで、どうなった?」 「団長以下、役者のアドリブで乗り切ったそうで。まぁ、そういった大道芸は得意なのでしょう」 そんなことで人気が出る舞台なのだ、ゲルマニアの文化程度が知れようというものだ。 「ゲルマニアらしい、といえばらしいことだ」 ふん、と鼻をならすリッシュモン。これだからゲルマニアとの連合は反対だったのだ。 「えぇ、我々のように念いりな脚本は書けぬ分、そうしたところで人気獲得に走るようですな」 ピクリ、とリッシュモンの肩が動く。 目は舞台の上、姫と悪役の王子との優雅なダンスシーンに注がれてはいるが、 頭は完全に男との話に集中していた。 「脚本、か。そういえば、次回の演目は?」 もちろん、客席のマナーとして小声だ。 いくらルール破りが得意なリッシュモンとて、そこまでルールを破る気はない。見えるところでは、だが。 「明日の朝、ですな」 話し相手の男がこともなげに答える。舞台上の俳優よりも、実に演技が上手いものだ。 新進気鋭の舞台監督として十分通用する見た目と受け答えだ。しかし、明日とは。 「急だな」 リッシュモンの頭では、算盤が弾かれていた。もちろん、文字どおりの舞台興行収益などではない。 考えているのは、今回の“舞台”により、どう情報を受け渡しすれば儲かるかという皮算用だ。 「客と役者が揃えば、早いに越したことは無いんですよ。いつ台本が他に洩れるとも限りませんのでね」 肩をすくめる様が、実に芸術家らしい動きだった。 この男は、このような職に就かず俳優という道もあったのではないかと思われた。 「ふむ、それなりに、趣向を凝らした舞台なのかな?」 リッシュモンも舞台好きの貴族としての演技を続ける。伊達に綱渡りは続けていない。 老獪な役者のみが可能な自然な演技だった。 「それはもう。こちらもフルキャストで臨みますからね」 「期待しよう。特等席から見させてもらうよ」 とはいえ、役者は本職ではない。二重の意味をもたせたやりとりは続ければ続けるほど苦しくなる。 「えぇ、それでは。私は舞台の準備がありますので、この辺りで……」 それを見計らったのか、男が中座しようとする。正直、助かったとリッシュモンは考えた。 「ふむ、分かった。演目表はいつものとおりでいいのだな?」 舞台上では、死んだと思われていた戦士が、必死に姫の元へ馳せ参じる場面で、 他の客はその見せ場に釘付けになり、二人の男の密談には気づいていなかった。 「えぇ、いつものとおりで」 演目表は、会議録のこと。それはトリステインの閣僚会議でなされる国家機密である。 だが、リッシュモンにとっては、それは豊かな老後のための安チケットでしかなかった。 「♪命 尽き果てようとも 離しはしない♪」 「♪決闘だ!♪」 決闘、か。くだらないことだ、とリッシュモンはそう思う。 決闘など、愚者のやることだ。賢者は、決闘を観劇しながら、懐を温めるのだ。 舞台上の俳優に、マザリーニ枢機卿と、クロムウェルの顔を重ねつつ、リッシュモンはニヤリと狡猾な笑みを浮かべた。 前ページ次ページゼロの黒魔道士
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58ページ目 prrr prrr セリ「はい、もしもし……」ピッ マキナ『もしもし、セリちゃん?』 セリ「……うん」 マキナ『聞いて聞いて、ラルトス君があたしと添い寝してくれるようになったよ!』 セリ「あぁ、そう……」 セリ「……それ言うためだけに電話かけたの?」 マキナ『まさか、そんなわけないじゃん』 セリ「……」 マキナ『……』 マキナ『あのね、これは結構真面目な話』 セリ「うん」 マキナ『件のラルトスの死骸ね、解剖してみたのよ』 セリ「うん」 マキナ『……大体外傷なんかが殆ど見られないから怪しかったのよね』 マキナ『予想通り、出たわ』 セリ「……毒が?」 マキナ『そう。消化されてないパンが幾つか出てきたのよ』 マキナ『大きさが大分個体差あったところを見ると、食べられなかったうちのラルトス君は幸運だったんだわ』 次へ トップへ
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神無月の巫女 エロ総合投下もの 正月リレーSS 正月・宴中 マ「姫様、もう少し飲まれますか?」 姫「私はもういいわ、お酒弱いもの」 千「……(じーっ)」 姫「千歌音、飲んでみる?」 千「え!?」 マ「姫様これ結構強いお酒ですよ?」 姫「大丈夫よ一口くらいなら、ほら」 千「(ドキドキ)……ごっくん!」 マ「あ、一気に飲んだ…」 姫「どう?美味しい?」 千「~~~????」 乙「一気に飲んで顔色が変わらないだなんて案外お酒強いのかもしれないわね」 姫「ちょっとそう言いながら注がないでよ」 マ「いやでも確かに強いのかも。人は見かけによらないもんですね」 千「????」 千歌音ちゃんの運命や如何に 千「ぐびぐび」 マ「本当に強いですね千歌音、淡々と飲んでるのに全然顔色が変わらないですよ」 姫「意外な一面だわね。それに比べてこっちは…」 乙「……うぅ~~ん、もう飲めないぃ…ムニャムニャ」 マ「酔っ払いですね」 姫「間違いないわね」 マ「潰すつもりが潰されましたね」 姫「まさかの返り討ちにあうとは思いもしなかったんでしょうね。ここで寝てしまったら寒くて風邪引いてしまうから部屋に連れていってもらえる?」 マ「はい、分かりました」 ~マコちゃん、乙羽さん退場~ 姫「千歌音、明日もあるしそろそろ御開きにするわよ」 千「ねえ、姫子」 姫「ん?なあに?」 千「寒くない?」 姫「え?…きゃあ!?」 千「ねぇ寒いんじゃなくて?私が暖めてあげるわ」 姫「ちょ、ちょっと!脱がなくていいから///ち、千歌音?まさか酔ってるの?」 千「いいえ、ちっとも酔ってなんかないわ。ね、だから早く」 姫「まっ待って!!分かったから脱がさないで!///」 千「だーめ、私が脱がしてあげるから手を離して」 姫「やっ!きゃああ!!」 マ「姫様ぁー!?どうされました?」 姫「っ!!?真琴今入ってきちゃダメ!!///」 姫子ー!はきっと半裸状態です、千歌音選手にマウントポジションとられてます 他の下女がいないのは帰省中ってことで マ「え?え?どうしてですか?」 姫「と、とりあえず今はダメ…///!!いいって言うまで詰所で待って――んふっ!?」 千「ちゅっ…姫子誰と喋ってるの?私を見て」 姫「んんっ!…ぷはぁっ!ご、ごめんね///ちょっとだけ待って…って、ゃん!///」 マ「???(あれ?まさかお取り込み中?)」 千「あむ…ふふ、姫子の胸、唇と同じでとても甘いのね」 姫「そ、そんな事…///ん…っ!はぅ……ゃん…だ、だめぇ…!///」 マ「///(姫様声が色っぽいんですけどー///!)」 姫子貞操の危機 襖の外でマコちゃん大興奮 イ「ちょっと早乙女さん、なにをはしたない顔をなさってるんですの!?」 マ「ちょ、ちょっとイズミ、いまは駄目だっ///」 イ「なにを言ってるんですの?姫さまの部屋の前でわけのわからないことを…ん?」 姫「そ、そこはだ、駄目よ……やっ…やめっ」 イ「???…な、ひ、姫さま…?わ、私の姫さまがこのようなお声を…」 姫「い、いやぁ…や、やだぁっ」 イ「ま、また姫宮さんですのね?どうせあの方がまた姫さまを誑かしたに違いありませんわ///」 襖を開けようとするイズミさんを止めるマコちゃん マ「い、いま入っちゃ駄目~こういうときくらい空気嫁イズミ~」 姫「ん…っ!はぁ、はぁ…///」 千「良い顔、ならこっちの方はどうなってるのかしら?」 姫「――――っ!?///」 千「やっぱり…もうこんなになってる」 姫「んっ、んん、ぁんっ!…はぁっ!そ、そこはだ、駄目よ……やっ…やめっ///」 千「いや。ねえ、我慢しないでもっと声を聞かせて?」 姫「ふぁ…!///……っ!?(うそ!襖の外に誰かいる!?)///」 千「姫子?どこ見てるの?こっち向いて、ね?…んっ」 姫「ち、千歌音待って!…ぁむっ!んふっ!んっ(マ、マズイ…!このままじゃイカされる…!)///」 頑張れ姫子 千「んっ…姫子、気持ち良いのね…」 姫「はぁっ…ゃん…ぁっ…!///(ダメ…!気持ち、良過ぎる…っ!)」 ~襖外~ マ「っ///!(やっば…。私まで変な気分なって来ちゃった…!)」 イ「ちょ、ちょっと早乙女さん?息荒いんですけどどうしましたの…?」 マ「えっ!?///い、いやその…(もじもじ)…ご、ごめん!私もう無理だっ!///」 イ「え?あ!ぃやっ…!///な、何ですの急に…んっ!?///」 マ「ぁむ…!///はぁっ…!イズミ、少しの間大人しくしてて…気持ち良くさせてあげるから…///」 イ「んあ!…な、何を勝手なこと…///!!」 マ「シーッ!静かにしないと姫様に見られちゃうぞ?それでもいいのか?」 イ「そ、それは…って早乙女さん!いやっ!ちょ…!帯解かないでくれます!?///」 マ「ごめんもう無理!///ん…っ!はぁはぁ!…イズミの胸、大きい…はむっ!」 イ「あんっ…!やっ…だめ…こ、こんなの、だ…めです、わ…!///」 マ「ちゅむ…っ!ほら…いつもみたいに足開いて…///」 イ「っ!?///も、もうですの!?や、やめ…!だめっ!ぁ!!…そ、そんな所顔近付けないで下さぃ!///」 マ「何今さら恥ずかしがってんだよ…綺麗だよイズミの此処。…ちゅ、ぺろぺろ///」 イ「ひゃあん!ぁ、あ、あん…!///」 マ「あむ…ちゅ、ほらもっと声抑えないとイズミのやらしい声姫様に聞かれちゃうぞ///」 イ「―っ!ん、んん!…ちょ、誰のせいで声が出てると…!///」 マ「あ、そういう事いうんだ。善がってるくせにwほれw」 イ「そんなこの程度で善がってる訳n…っ!?ああぁん、指はだめぇ…!///」 マコちゃんどんだけー 姫「ぁん、んんっ…っ!――///!」 千「?もう達してしまったの?」 姫「はぁ…はぁ…///(ま、まさか千歌音にいとも簡単にイカされてしまうなんて… …ん?あれはイズミと真琴の声…?あっちもまさか…)」 千「姫子好きよ、大好き…」 姫「っ!?やっ…!んぁ!つ、続けざまはだめ、千歌音!ちょっと待って…っ!///」 千「?」 姫「はぁ、はぁ…///(危ない、危ない…)」 千「???…あぁ、そう。そういう事ね」 姫「え?…ってちょっと!///ちか、ね…!ちがっ…!んんっ!///」 千「ちゅ、ぁむ…指じゃなくて口が良かったのね」 姫「そ、そうじゃな…!///くっ、はぁ、あん!///(も、もう駄目…)」 千歌音恐ろしい子…! 数刻後… 姫「ま、真琴…もう入ってきていいわよ…」 マ「は~い!(襖ガラガラっと開け)もういいんですか(色んな意味で)?」 姫「もう十分よ…。千歌音寝ちゃったし…」 千「スヤスヤ…」 マ「あ、本当だ。って姫様足元ふらついてますけど大丈夫ですか?」 姫「全っ然足に力入んないわ…(疲)何で真琴はそんなに元気なの…?」 マ「いやあ~それはイズミが…ふがっ!」 イ「…それ以上言ったら刺しますわよ///(怒)」 マ「ぐ、ぐるじぃー!じめ゛ざま゛だずげれ゛~!!」 姫「イズミ、そんなに強く首を絞めては駄目よ。 刺す以前に真琴の顔が青くなってるわ、だから…ほどほどにね?」 イ「はいwかしこまりましたわ姫様w」 マ「う゛~ぞんな゛~~(泣)!」 姫「あ~眠い…(腰も痛いし…)、じゃあ後片付けよろしくねぇ。 私も寝るわぁ~おやすみぃ…」 そして翌朝… 千「わ、私もうここに居られません…///(大泣)!!」←記憶ありません 姫「はいはい、怒ってないから。泣かない、荷物持たない、出て行かない」 千「でも、だってぇ…!」 姫「大丈夫だから、ね?(しかしあれだけ飲んで二日酔いにもならないなんて…)」 マ「ねぇイズミ~」 イ「…(無視)」 マ「しくしく…!」 イ「嘘泣きはお止しなさい(怒)!」 乙「あ゛~~~頭痛いぃ…」 千「だ、大丈夫ですか?乙羽さん…」 乙「死にそぉ~姫宮さん薬作って飲ませてw」 千「え?私がですか??」 姫「自分で薬煎じて飲みなさい(キッパリ)」 オロチ新年会中 ※あまり深いことは考えず生温い目でお願いします ギ「おら!飲めよ七の首ぃ~~!!」 ソ「や、やめろギロチ!俺はまだ未成年だ!っていうかお前まだ中学生だろ!?」 コ「別にいいじゃん、うちらオロチなんだし。あぁー!ちょっと六ノ首!私のお刺身盗らないでよー!」 ネ「もぐもぐw油断してる方が悪いにゃあの~ww」 レ「…ダイエットになっていいんじゃない」 コ「レーコ何か言った!」 レ「…別に(地獄耳…)」 ミ「ツバサ様、お酒飲まれますか?」 ツ「うむ」 ギ「あ~正月っても退屈だなぁ。カツアゲでもすっかな~どいつもこいつもお年玉もらってんだろうし」 ソ「な!?お前何言ってるんだ!!駄目に決まってるだろ!」 ギ「だ~~っ!いちいちうるせぇんだよ七ノ首!姫ちゃんに振られたクセに!」 ソ「(ズキっ!)…き、貴様ぁ触れてはならん事を~~///!!」 コ「もう!!ちょっと暴れないでよ!外でやれ!外でー!!」 ネ「お餅美味しいにゃあの~w」 レ「やれやれ…」 ミ「ツバサ様、もう一杯どうぞ」 ツ「うむ」 7人出すとカオスww 数時間後… ギ「ぐおおぉ…んがー…」 ソ「うぅ……」←ギロチの足が鼻らへんにある ネ「むにゃ~もうお腹いっぱいにゃの~…」 コ「あ~~~飲み過ぎらぁ~~…」 レ「弱いクセして飲むから…」 コ「らによ~、らんあ文句あるってーのぉ?」 レ「別に…(服まで乱れてるし)」 コ「あによ~どいるもこいるもあたしの事バカにしれ~!!…んっ!」 レ「ちゅ…あむっ…少し黙って」 ん~自分で書いといて微妙… 某ホテル? ミ「あむ、ちゅ…宜しかったんですか?んふ…弟公を置いてきてしまって…」 ツ「ああ。ん…っ俺に助けてもらってるようではあいつもまだ青い」 ミ「そうですか、それより今日のツバサ様のは元気になりませんね…」 ツ「…少し飲み過ぎたか」 ダメ兄貴